築90年の建物を再生

1927年のアールデコ建築のビルを、芸術、教育、医療の未来型コミュニティーへ再生。設備と空調システムの再設計で約1億7千万円の運用コスト削減しました。

 

クロスタウンコンコースとは

米国テネシー州メンフィスにある90年以上の歴史あるアールデコ建築のビルを再利用した混合都市型コミュニティー。

元々は1927年に通信販売業シアーズ・ローバック社の流通センターとして建設された14万㎡の大きな建物でしたが、1993年に流通センターが閉鎖されたため17年間放置されていました。2010年に再開発のため芸術団体「クロスタウン・アーツ」が結成され、2017年にショップ、レストラン、芸術、教育、医療、教会など生活に必要なものが集約された独創的なデザインの建物へと生まれ変わりました。

 

課題

クロスタウンコンコースの不動産管理担当のクッシュマン&ウェイクフィールド社と、クロスタウン開発チームは、地域の活性化には不動産の市場価値を高めることが不可欠であると考えていました。同時に建物のオーナーにとっては、運用コスト削減、持続可能性の促進、資産の潜在価値を最大限にすることが重要です。その結果、テナントの満足度が向上することで、不動産関係者はテナント契約増加を見込むことができます。これらを実現するため、チームはこの地域と建物を連携させる戦略的パートナーを探していました。

ソリューション

不動産管理担当と開発チームは、空調設備・制御・エネルギーサービスのパートナーとしてトレインを選びました。その理由は、長期にわたり良好な関係を保っていること、トレインの革新的な考え方、不動産業界知識、そしてプロジェクトの成功にコミットしたことです。この築90年の放置されてきた建物は、当初はビジネス、住居、教育、小売店向けに建築されたものではありませんでした。そこでトレインはシステムの再設計にあたり、デベロッパー、エンジニア、施設マネージャーをウィスコンシン州ラクロス工場に招き、効率的な設計について議論したのち、採用予定のトレイン・セントラバック・ターボ冷凍機立会い性能試験を実施しました。

低負荷要件を満たし、エネルギー使用量を削減

低負荷条件に対応するため、当初は525トンのターボ冷凍機を4台、100トンのスクリューチラー1台、冷却塔5台からなる空調システムを設計しました。その中では、トレインの専門知識とチームのコラボにより、課題に対する新たな発見もありました。立会い性能試験の結果、トレインのターボ冷凍機がより低い負荷での運転が可能なことがわかり、チラーを取りやめ、低流量コンデンサ設計の700トンのターボ冷凍機3台と冷却塔3台に設計変更しました。この再設計により、160HP分のポンプとファンを削減でき、約325㎡のスペース節約になりました。

クッシュマン&ウェイクフィールド社の資産管理担当シニアバイスプレジデント、ダン・チャンシー氏は、次のように述べています。

「当初の目標は、冷凍機の能力を10%まで下げることでしたが、実際には5%まで下がったため、冷凍機の容量を大きくして購入台数を減らすことができました。より効率的で低コスト、そして将来的な活用が期待できる空きスペースも確保できたのです。」

運用の最適化と効率の改善

トレインのビル管理システム「トレーサー・アンサンブル」はクラウドベースで、日々の運転、スケジューリング、設定値の変更、トラブルシューティング、チラープラントの最適化等を行うことができます。また、ビルパフォーマンス分析、エネルギーパフォーマンス分析、アクティブモニタリング等のサービスも提供しています。

エネルギー消費量の管理

ビルパフォーマンス分析では、課題を明らかにした上で、機器の運転時間の最適化や運用コストの削減、持続可能な取り組みを提案します。

エネルギーパフォーマンス分析では、リアルタイムでエネルギーを監視し、いつどこでエネルギーが消費されているかを特定し測定可能な結果につなげる、トレインの専門知識と分析力を活かしたサービスです。

アクティブモニタリングは、24時間365日の自動アラーム、イベント監視、さらにトレイン技術者が問題の予知診断、迅速なアラーム解決、生産性の向上のための分析を行います。

最適運転の確認

一時的にサービス契約を結んだことは、この複雑な建設プロジェクトの中でもシステムを最高のパフォーマンスで運転する事に役立ちました。工事後は包括的なサービスプログラムが導入され、施設管理の現場に常勤の技術者2名を派遣し、内部システム、ツール、ソフトについて学ぶとともに、スタッフに指導と研修を行いました。全ての主要機器の予防保全を行うことで、不具合、ダウンタイム、エネルギー使用量、サービス費用を削減することができます。またトレインの技術者による予測分析により、効率の悪い運転や潜在的な不具合を検出し、予想外の停止や緊急修理の回避に役立っています。

結果

不動産管理会社のクッシュマン&ウェイクフィールド社とトレインが連携し、クロスタウンコンコースにソリューションを提供した結果、効率と快適性の向上、持続可能性の提示、運用コストの削減、地域の資産価値の向上につながりました。また、デベロッパーに対しては25万ドル以上のイニシャルコストの削減、そして今後20年間で130万ドルを超えるライフサイクルコストの削減を実現しています。さらに、機器資産の50%削減により、約325㎡のスペース削減となり、追加収益を生み出すことが可能になりました。トレインはクロスタウンコンコースと協力し、エネルギー使用と持続可能性の重要性を促進する公共の教育カリキュラムも開発しています。

クッシュマン&ウェイクフィールド社の資産管理担当副社長 ブラッドリー・ウィルフォード氏は次のように述べています。

「将来的に継続可能なマネーメーカーとならない不動産は、地域にとって不利益になります。クロスタウンコンコースは最終的には非営利団体による運営のため、ここで得た利益は地域社会に還元されるでしょう。」

同社のチャンシー氏はこう付け加えます。

「この建物にとってのなにがベストか?に重点をおいて共同努力しました。クロスタウンコンコースが近隣の投資活動に影響を及ぼし、経済成長の促進につながった時が、このプロジェクトの成功と言えるでしょう。」