注目の新冷媒とは?変遷と展望をわかりやすく解説

液化しやすい気体であるフロンは、物を冷やすことを目的とした装置に使用するために人類が開発した、人工的な物質です。フロンは蒸発しやすく、油を溶かす性質もあるため、さまざまな製品や工業用途に応用されるようになりました。

しかし、人体に影響をもたらす毒性もなく扱いやすいフロンにも弱点がありました。ノーベル化学賞も受賞したアメリカのローランド教授らが、「大気中に放出されたフロンがオゾン層を破壊する」ということを発見したのです。1974年のことでした。

オゾン層が破壊されると地上に届く紫外線量が増加し、人間に健康被害を与えます。また、動植物の遺伝子にも悪影響があるなど、世界的に対策が求められるようになったのが1980年代のこと。1989年に発効されたモントリオール議定書では、特定フロンのCFCと指定フロンのHCFCの2種類が規制され、特定フロンは1996年までに全廃、指定フロンもまもなく廃止されます。

このようなフロンの規制により、代わりになる新冷媒の動向に注目が集まっています。新冷媒の概要と、その導入メリットをみていきましょう。

新冷媒とフロンの関係

フロンは、塩素やフッ素によって炭化水素の水素を置換することで合成される化合物を指しています。構造式からみたフロンは水素、フッ素、炭素、塩素の4つの組み合わせによって3つのグループに分けられています。

  • CFC:クロロ(塩素)フルオロ(フッ素)カーボン(炭素)
  • HCFC:ハイドロ(水素)クロロ(塩素)フルオロ(フッ素)カーボン(炭素)
  • HFC:ハイドロ(水素)フルオロ(フッ素)カーボン(炭素)

この3つのなかで、オゾン層を破壊するのがCFC(特定フロン)とHCFC(指定フロン)です。

フロンがオゾン層を破壊するという認識が広まった1980年代後半から90年代前半には、HCFCを代替フロンと呼んで、CFCからの転換を行っていました。しかし、指定フロンのHCFCについても全廃が予定され、HFCに代替フロンの座を譲っています。

ところが、HFCはオゾン層に影響を与えない代わりに、二酸化炭素とは比較にならないほど大きな温室効果をもたらす物質でした。このため、新たにオゾン層にも温暖化にも影響の少ない冷媒の開発が必要となったのです。

代替フロンから新冷媒へ

冷媒用のHFCは、「特定製品に関わるフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン類回収・破壊法)」などで適切な回収が義務付けられました。これを受けて経済産業省と環境省では、HFCに加えてPFC(パーフルオロカーボン)とSF6(六フッ化硫黄)の代替フロン3ガスに、温室効果の高いNF3(三フッ化窒素)を加えた4ガスの管理を強化し、廃棄する方針を打ち出しています。

これにより冷媒は、ノンフロン化と地球温暖化係数(GWP)の低いものが求められています。次世代の新冷媒として主に次のようなものがあります。(下記は候補を含んでいます。)

HFO-1233zd(E)

二重結合のフッ素化合物であるHFO(ハイドロフルオロオレフィン)による冷媒。GWPが極めて低く、不燃性で毒性が低い。

HFO-1234yf、HFO-1234ze

二重結合のフッ素化合物であるHFO(ハイドロフルオロオレフィン)による冷媒。GWPが極めて低く、不燃性で毒性が低いが、微小な燃焼性がある。

HFC32

HFCのなかでGWPが低く、効率に優れている冷媒。燃焼性はあるが微小。

炭酸ガス

GWPに加えて毒性も低く、可燃性もまったくない冷媒。ヒートポンプ式給湯器に使用される。ただし、COP(機器効率)が低い。

プロパン

GWPが低く、COPの高い冷媒。ただし、燃焼性が高いため、爆発の危険を回避するなど安全性の確保が必要。

今後も新冷媒の動向から目が離せない

冷媒を取り巻く環境は、モントリオール議定書や京都議定書の発効など、この20年ほどで大きく変化しています。さらに、国家単位で2050年を見据えた対策が検討されるなど、これからも新たな技術の導入によって変化が予想されます。

一方で、オフィスのエネルギー消費の多くを占める空調の要であるのがこの冷媒です。つまり、企業にとっても冷媒の動向は他人事とはいえず、設備やシステムへの投資計画に関係する重要なニュースとして認識する必要があります。

2020年には先進国で、2030年には発展途上国でも指定フロンが全廃される予定です。こうした世界的な情勢のなかで、一般の企業にも新冷媒の動向を意識した切り替えが求められています。
 

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【参考】