企業の温暖化防止活動促進への影響力が期待されるESG投資

日本でも注目度が高まりつつあるESG投資。地球温暖化を防止する企業の活動を促進する影響力が期待されています。そこで今回は、ESG投資とはどのようなものなのか、地球温暖化防止と投資家がどう関係してくるのか、世界と日本におけるESG投資の状況についてご紹介します。

 

ESG投資とは

投資する企業の価値を測る材料といえば、主にキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報ですが、これに加えてESG要素という非財務情報を考慮する投資が注目されています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の頭文字のことであり、ESG投資とは投資先企業の価値を測る材料にこの3要素を加えた投資を指します。

企業におけるESG要素の例

ESG投資とは

環境面からみたESG投資のメリット

 

長期投資家の中長期的な視点による投資判断で企業活動が促進

投資家が企業の投資ポートフォリオを考慮する際、短期的視点からの判断と、長期的な視点からの判断では、情報の範囲や深さ、将来の見方や考え方が変わるため、企業に対する評価もそれぞれの視点により異なってきます。

例えば、パリ協定(*)の長期目標を達成するための企業の活動を促進するためには、中長期的な視点で企業の活動を評価する長期投資家の積極的な投資が有効と考えられます。長期投資家と企業がそれぞれに役割を果たすことで、企業が、持続可能な社会の実現に向けた活動をより積極的に行うことが期待できます。

長期投資家と企業双方による持続可能な社会に向けた働きかけが活発化することにより、経済活動と環境問題の関係が好転することが、ESG投資のメリットであると考えられています。

*パリ協定:2016 年11月4日に発効した国際条約。「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」や「今世紀後半の温室効果ガスの人為的な排出と吸収の均衡」を掲げた。

世界と日本のESG投資の現状

 

世界

  • 2006年国際連合が、投資家にESG課題を組み込んだ投資を促す「責任投資原則(PRI)」を公表。これをきっかけに、欧米を中心として世界の投資家にESG投資が浸透。
  • 持続可能な投資の普及を目指す国際団体 世界持続可能投資連合(GSIA)によると、2014年時点の世界のESG投資残高は21兆3575億ドル(約2,450兆円)で、世界の合計運用資産の約3割を占めている。
  • 2017年5月現在、1700以上の世界の年金基金や運用会社がPRIに署名し、署名した機関の合計運用資産は62兆ドル(約7,000兆円)に上る。

 

日本

  • 日本では、世界最大の年金基金 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年、PRIに署名。続いて大手生命保険などが署名し、2017年5月時点で50以上の機関が署名している。
  • 東洋経済新報社は、長期にわたる独自のESG調査を基に「ESG企業ランキングトップ100」を発表。企業のESG関連の取り組みが目に見える形で評価され始めている。

 

まとめ

地球温暖化による気候変動は、社会はもちろん、経済にとっても非常に大きなリスクがあり、企業による地球温暖化防止へ向けた取り組みは必要不可欠であると考えられます。ESG投資が浸透していけば、企業の地球温暖化防止へ向けた活動を促すのは、政治から金融へと変わり、投資家が大きな役割を担っていく存在になる可能性があります。

ESG投資が活発に行われることにより、経済活動と環境問題の好循環が生まれることが期待されています。