モントリオール議定書キガリ改正を踏まえた今後のHFC規制のあり方について(案)ダイジェスト

HFCの消費量(*1)の段階的削減義務等を定める「キガリ改正」。日本では2019年1月1日のキガリ改正発行を見据え、2017年9月に対応策案が取りまとめられました。これに対し2017年10月6日~11月6日の期間でパブリックコメントの募集が行われましたが、今回はパブリックコメント反映前の案についてご説明いたします。

(*1) 消費量=生産量+輸入量-輸出量

キガリ改正への日本の対応

キガリ改正を確実に遵守するため、経済産業省、環境省が中心となり国内制度の整備が進められています。産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会 フロン類対策ワーキンググループ、および中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会の合同会議において取りまとめられた案の【基本的事項等】は以下の通りです。

  1. 国内担保の基本的方針
  2. 規制対象物質
  3. 基準限度の取扱い
  4. 破壊量の取扱い
  5. その他の検討事項

1. 国内担保の基本的方針

キガリ改正の求めるHFCの段階的削減義務を担保するためには、2018年中に法的な仕組みを確立し、2019年1月からの実施に向けた準備が必要です。

法的な仕組みを設ける上では、オゾン層保護法の規制対象物質にHFCを追加することがシンプルかつ効率的であり、事業者にとっても制度になじみがあり受け入れやすいと考えられます。それゆえ、オゾン層破壊物質と同様に、HFCについても生産量及び消費量の基準限度を設定することが適当であると示されています。

なお、生産量及び消費量の基準限度の設定は、各物質数量に地球温暖化係数(GWP)を乗じた値の総量により設定することが適当としています。

2. 規制対象物質

キガリ改正により新たに対象となるHFCは以下の18種類です。

キガリ改正

3. 基準限度(*2) の取扱い

キガリ改正の定めるHFC消費量の削減スケジュールと、フロン排出抑制法に基づく使用見通しの量的な関係は図の通りです。

2020年度、2025年度とも、使用見通しが上限値を下まわっています。しかし2029年度以降の厳しい上限値を達成していくためには、上限値が切り下がる年の相当程度前から、さらなる消費量の削減努力を図っていくことが必要とされています。

(*2) 基準限度=キガリ改正に基づく消費量の上限値

 

使用見通しとキガリ改正の削減スケジュール(消費量)の関係

使用見通しとキガリ改正の削減スケジュール(消費量)の関係

基準限度と使用見通しとの関係性について

フロン排出抑制法上の使用見通しと、オゾン層保護法上の消費量の基準限度との差分として生じる余裕分については、以下の様に活用すること等が考えられています。

  • 想定されていない突発的な需要への対応
  • 将来の消費量削減に寄与するような製品の出荷等を行う事業者に対するインセンティブ
  • 新規参入者についても、既存事業者と同様の考え方で割り当てを行うことの必要性

また、毎年の製造許可等の割り当て運用についても、本文の中で方向性が解説されています。

4. 破壊数量の取り扱い

モントリオール議定書に基づき、日本ではオゾン層保護法第11条において製造数量の確認制度を規定していますが、活用実績がありません。しかし議定書において求められる2029年度以降の大幅な生産量・消費量の削減を見据えた場合、本制度に係る関連省令を整備し、フロン類の破壊数量の確認の仕組みを活用できる環境を整えておく必要に迫られています。

5. その他の検討事項

 

国民の理解及び協力

キガリ改正は、HFCの製造業者等だけでなく、HFC使用製品の製造者及び利用者、充填回収業者、破壊・再生業者に至るHFCに関わるすべての者、つまり国民全体がHFCによって地球温暖化に深刻な影響がもたらされることを理解し、積極的に削減に取り組む必要があるとしています。

研究開発の推進

中小型の空調機器エアコンなど、代替製品の実用化の目処が立っていない分野についても、代替製品の開発と実用化が不可欠だとしています。

一次ユーザーにおける取り組み

HFCの生産量・消費量の削減のためにはHFCの一次ユーザー(*3) においてもHFCの使用量を削減していくことが不可欠であり、フロン排出抑制法に基づいて取り組んでいる使用合理化の取り組みと相まって、自らが業として使用するHFCの低減に取り組む必要があるとしています。

(*3) 業としてHFCを使用する者、及びHFCを使用する製品を製造するメーカー

機器ユーザーへの配慮

HFC削減の促進のためには、HFCを使用した冷凍空調機器等のユーザー(機器ユーザー)における、低GWP・ノンフロン製品への転換が不可欠です。代替製品の実用化に加えて、すでに実用化されている低GWP・ノンフロン製品の普及については、現在、自然冷媒機器の導入に関して実施しているような補助制度の拡大等を行うことはユーザーの転換支援に有効であるとしています。

 

※本文の内容、図表は「モントリオール議定書キガリ改正を踏まえた今後のHFC規制の在り方について(案)」を参照、又は引用しております。詳細については本文をご確認ください。

出典: モントリオール議定書キガリ改正を踏まえた今後の HFC 規制のあり方について(案)