気候関連財務情報開示タスクフォース TCFDとは?

パリ協定を受け、世界的に温室効果ガス排出削減に向けた取り組みが進められている中、金融の安定性に向けて議論される気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)という国際イニシアチブがあります。今回は、このTCFDの概要をご紹介します。

TCFDとは

気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下、TCFD)は、2015年12月4日に金融安定理事会(Financial Stability Board: FSB)によって設立されました。

2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな枠組みであるパリ協定を受け、金融セクターは気候関連の課題についてどのように考慮していくべきかを議論するために、FSBにより官民の関係者の招集が要請され、設立に至りました。今後、世界的に低炭素経済へと移行していく中、金融の安定性にとって、より適切な資本配分が行われることが重要であるという考え方に基づいています。

「移行リスク」と「物理的リスク」

低炭素経済への移行は、多くの企業にリスクと機会をもたらすと予想されています。TCFDは、気候変動に関連するリスクを「移行リスク」と「物理的リスク」とに分け、それぞれを以下のように分類しています。

リスク

(1)移行リスク

  • 政策的・法的リスク
  • 技術的リスク
  • マーケットリスク
  • 評判リスク

(2)物理的リスク

  • 急性の物理的リスク
  • 長期的な物理的リスク

 

機会

  • 資源効率
  • エネルギー源
  • 製品・サービス
  • マーケット
  • レジリエンス*

*「レジリエンス」(resilience)は、一般的に「復元力、回復力、弾力」などと訳される言葉で、近年は特に「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」という心理学的な意味で使われるケースが増えています。さらにレジリエンスの概念は、個人から企業や行政などの組織・システムにいたるまで、社会のあらゆるレベルにおいて備えておくべきリスク対応能力・危機管理能力としても注目を集めています。(引用:weblio辞書 人事労務用語辞典

投資家等にとって財務上の意思決定を行うには、投資先における上記の気候関連のリスクと機会が将来のキャッシュフローと資産・負債に対しどのように影響するかについて正しく理解する必要があります。これらの状況把握がない場合、効率的な資本配分は実現せず、影響が突然顕在化したときには、金融市場の安定性が損なわれる恐れがあります。

投資家等の正しい理解を促すためには、企業による情報開示が重要になります。しかし、これまで企業が開示してきた気候変動関連の情報は、投資家等の意思決定のためには十分なものとは言えませんでした。とはいえ、情報を開示する企業の側にとっても情報開示のための枠組がなかったとも言えます。この状況を改善するため、TCFDは企業にとって有用な情報開示枠組を提示することを目的としています。

提言の構成

TCFDは、組織運営における4つの中核的要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標および目標)から構成される提言を行っています。そして各要素について投資家等の理解の助けになる「推奨される情報開示」が示されています。

ガバナンス

【推奨される開示内容】

リスクと機会についての取締役会による監視体制、評価・管理する上での経営者の役割の説明。

 

戦略

【推奨される開示内容】

短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会の説明、組織のビジネス、戦略および財務計画に及ぼす影響の説明など。

 

リスク管理

【推奨される開示内容】

識別・評価するプロセス、管理するプロセスの説明、及び、それらが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかの説明。

 

指標および目標

【推奨される開示内容】

リスクと機会を評価する際に用いる指標の開示、Scope 1~3の温室効果ガス排出量と、その関連リスクの説明、目標および目標に対する実績の開示。

 

別冊として用意されている「TCFD提言の実施手引き」には、金融機関を対象とするガイダンスと気候変動に影響を受けやすい「エネルギー、運輸、素材・建築物、農業・食品・木材製品」の特定の4業種を対象とするガイダンスが用意されています。また補足資料として、気候関連シナリオの種類やシナリオ分析の手法等が説明されている「気候関連リスクと機会の開示におけるシナリオ分析の活用」もあります。

TCFDの今後と企業の対応

TCFDは2018年秋まで活動を継続し、提言の普及や適用事例のモニタリングを行う予定です。TCFDは、企業に対し、できるかぎり速やかに提言に基づいた気候関連財務情報の開示を行うことを推奨しています。

各企業がTCFDの提言に対してどのように対応するかは、各企業の判断になりますが、想定されるリスクや機会のビジネスへの影響を分析し、長期的な視野から対応するかどうかや、ビジネス戦略を再検討すること自体、価値があるとされています。

 

参照

 

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