データセンターのフリークーリング冷凍機導入とエネルギー管理

米国ジョージア州オーガスタにある歴史的な運河に構築されたデータセンターにおける、フリークーリングターボ冷凍機とエネルギー管理システムの事例です。

 

シブリー・テクスタイル・ミル とは

Sibley Textile Mill

マスターズ・ゴルフ・トーナメントの開催地としても知られる米国ジョージア州オーガスタ。

シブリー・テクスタイル・ミル(シブリー織物工場)は、ダウンタウン近くのオーガスタ運河にある歴史的な建物です。1882年に建設され、2006年まで織物製品などが製造されていました。

当時の屋内は典型的な織物工場ですが、その印象的な外観は、折衷式やネオゴシックなど、さまざまな呼ばれ方がある華やかなスタイルで有名です。

 

課題

ケープオーガスタ・デジタルプロパティーズ社(CADP)は、1年半毎にデータ処理量が倍増するという急速な需要増大に対応するために、データセンターの新設に踏み切りました。データセンターの開発に向けた重要事項は次の3点でした。

まず、主要なユーザーに近い場所にデータセンターを構築すること。

次に、その地域が歴史的な背景を持つ重要な場所であるため、データセンターを開発することによる利益を地域のコミュニティに還元すること。

3点目は、再生可能エネルギーを活用した独自の冷却システムを設計し、環境負荷を最小限に抑えつつ、高い効率と信頼性、冗長性、そして快適性を実現することでした。

開発者は、シブリー・テクスタイル・ミルを理想的な場所として選定し、施設内を流れるオーガスタ運河の河川水をデータセンターのエネルギーとして活用することにより高効率なデータセンターの構築を計画しました。

ソリューション

CADP社は、トレインの事例を参考とし、オーガスタ運河をフリークーリング用の冷水と、データセンターの負荷に対する予備電源として活用し、長期にわたって自然の水力を効果的に利用することを検討課題としました。

設計の検討

トレインは、CADP社と、エンジニアリングコンサルタントのジョンソン・スペルマン&アソシエイツ社(Johnson、Spellman&Associates、Inc.)との一連の電話会議を通じて、プロジェクトの課題、目標、および要求される性能を詳細に確認し、基本設計に必要な調査を支援しました。 開発者とエンジニアは、ウィスコンシン州ラクロスのトレイン本社でトレインのアカウントマネージャー、システムエンジニア、プロダクトマネージャーと打ち合わせを行い、重要な問題や課題を確認しました。

そして、運河の水量不足や、設備のメンテナンス時に運河の水が利用できなくなる等の潜在的な制約を考慮し、要求性能を満たすための冷凍機の詳細な設計と、緻密な制御により高いシステム効率を実現するトレインの冷凍機システム最適化(Trane Chiller Plant Optimization)を提案しました。 プロジェクトチームは共同でデータセンターの運営に必要な電力の相当分を供給する水力を確保する独自の方法を考案しました。

冗長性の達成と運用の最適化

このデータセンターでは、サーバーから発せられる熱の除去を行う冷凍機の冷水として、運河の河川水をメインに、工業用水をバックアップとして使用します。 トレインのCenTraVac™ターボ冷凍機により、冷凍機システムはポンプの負荷を低くするために、ΔT:6.7℃(20°F)で12.77℃(55°F)の冷水回路で運転します。 また、このシステムは、南部の気候を利用し、冷凍機のフリークーリング運転でデータセンターを稼働することができます。 冷凍機とポンプを最適なポイントで運転し、効率のバランスをとることによりシステム全体の高効率化を達成しました。

また、開発チームは2次側設備(エアサイド)の制御上の課題を発見し、トレイン・パフォーマンス・クライメート・チェンジャー(Trane® Performance Climate Changer™)AHUを採用することで問題の解決とイニシャルコストの削減、省エネを実現しました。

この設計により、CADP社は1.13から1.15の電力使用効率(PUE*)を達成することができました。

* PUE(Power Usage Effectiveness)とは、データセンターの電力使用効率を表す指標

テナント満足度の向上とエネルギー管理

トレインのトレーサー・アンサンブル(Trane Tracer® Ensemble™)エネルギー管理システムは、システムの統合制御を行うことができます。 また設備管理者は、スケジュール管理、設定値の変更、アラーム管理、快適性の問題にタイムリーに対処することによるテナントの満足度向上や、徹底したエネルギー管理も行うことができます。

CADP社はトレインのビルディング・パフォーマンス分析ソフトウェアを活用して積極的なエネルギー管理を行い、トレインから得られる推奨事項を参考に省エネ対策を実施し、システムを最適な状態で運転することができます。

また、トレインによるオンライン監視により、重大なアラーム時の迅速な対応が可能となったことにより、最大限の性能と運転時間を実現することが可能となりました。

結果

CADP社、ジョンソン・スペルマン&アソシエイツとトレインが、チームとして、この新しいシブリー・テクスタイル・ミル(Sibley Textile Mill)データセンター向けに、信頼性とエネルギー効率が高く、持続可能なシステムの設計を行いました。

チーム一丸となってプロジェクトの目的を達成し、ユーザーにとって利便性の高い地域にデータセンターを構築し、歴史的に重要な建物を保護しつつ、環境への負荷低減と省エネを達成しました。

このデータセンターは、同等規模のデータセンターの約1/3の電力消費量で運営されることが予想されており、利便性が高く低コストなテナントの提供が期待されています。歴史的なシブリー・テクスタイル・ミルの再開発により、同地域は、新しい産業による経済的利益と、コミュニティにもたらされる新たな雇用が生まれることも期待されています。