空調設備のランニングコスト削減のためにできること

空調は、建物のエネルギー消費量の多くを占めています。例えば、オフィスビルにおけるエネルギー消費のうち、空調が占める割合は約28%(一般財団法人省エネルギーセンター調べ)。つまり、地球温暖化対策や、光熱水費の削減といった建物の運用・管理におけるエネルギーコストを考えた場合、空調の省エネ化が効果的といえます。今回は、空調のランニングコスト削減のためのポイントを紹介します。

空調の省エネ化に対するネックはLCEM(エルセム)で解決

上記で説明した通り、空調のランニングコスト削減への取り組みは、重要な課題といえます。しかし、施設のライフサイクル(企画・計画・設計・施工・運用)における管理の複雑さによって、空調のランニングコスト削減は、実行が難しいと指摘されています。

空調の省エネがネックになる理由

 

  • 変動する気象や室内状況に対応しなければならず、構造が複雑

気温は、季節や時間によっても大きく変化します。室内の状況は、部屋の方位や人の出入りなどで、さらに複雑さを増します。そのような空調に対しての省エネは構造的に大変難しいといえます。

  • いろいろな機器を組み合わせた複雑なシステム

メーカーや機種、能力など、各現場のニーズや状況に合わせているため非常に複雑です。

  • システムの企画・計画・設計・施工・運用管理の担当者が異なる

担当者同士のコミュニケーション不足により、一貫していない空調システムの建設、運用、管理がなされ、結果として、エネルギー性能の低下を招く可能性があります。

  • 簡易な評価手法がない

簡易で統一された評価手法がないため、省エネ計画を立てにくいといわれます。

 

複雑なエネルギー管理を簡単にできるLCEM(エルセム)

LCEM(エルセム)とは、「ライフサイクルエネルギーマネジメント」の略称で、省エネルギー性能の分析・評価を手軽に行える手法です。「Excel(エクセル)」の基本的な操作で、省エネ化のネックであった空調システムの選定や運用管理の問題点の解決、効果試算などのマネジメント作業に利用することができます。LCEMは、国土交通省がシミュレーションソフトを無料配布しています。

段階別にみる検討事項

空調のランニングコスト削減に向けて、施設のライフサイクルを段階別に検討しましょう。

  1. 企画の段階:空調システムのエネルギー性能の目標値を設定します。
  2. 計画の段階:設定した目標値を可能とするシステムを選定し、エネルギー性能を評価します。
  3. 設計の段階:設定した目標値を満たすシステムを設計します。
  4. 施工の段階:設置機器のエネルギー性能の確認と、試運転調整を行います。
  5. 運用管理の段階:エネルギー性能の目標値達成のために適切な運転を行います。
  6. 改修企画の段階:現行のエネルギー性能を把握し、改修後の目標値の設定と改善効果を評価します。

空調のランニングコストを削減するシステムの例

ランニングコストに直結する空調節電システムは、小規模なものから大規模工事が必要なものまであり、その費用対効果も異なります。

小規模な節電システム

  • 金属表面修復剤(エネデュース):薬剤をエアコンの室外機に注入。節電効果目安(10~35%)
  • 補助コンデンサ:エアコンの室外機に設置。節電効果目安(10~30%)
  • 業務用クリーニング:フィルターや熱交換器の洗浄。節電効果目安(20~30%)
  • 噴霧器:室外機に設置。節電効果目安(16~20%)※冷房シーズンのみ

 

中~大規模な節電システム

  • デマンドコントローラ:電力メーターと空調機器の間に施工。節電効果目安(15~20%)
  • ガスヒートポンプ:室外機をガスエンジンに交換。契約電力の低減を図ることができ、ガスの排熱を有効利用できるため暖房の立ち上がりが速くなります。ガスエンジンの余力で発電するタイプもあります。
  • 専門メーカーによるシステム導入:LCEMに基づいて「空調・換気システム」を一新し、根本的な省エネシステムの構築を目指します。

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省エネ企業のメリット

企業の省エネ対策を考える上で、費用対効果によるコストパフォーマンスの視点は重要です。空調設備のランニングコストの削減は、省エネルギー効果だけでなく、「空気(換気)の改善」による快適性の向上など、環境保全においても優れた効果を発揮します。つまり、空調設備のランニングコストの削減は、「経費削減」「商業施設の集客効果」「働く人の環境改善」「建物の資産価値の維持・向上」など、いろいろなメリットが考えられます。

空調設備の省エネ化へ

企業の省エネ対策は、ランニングコストの削減メリットだけでなく、CO2削減など企業の社会的責任を果たす意味でも重要です。自社に合った省エネルギー空調システムの導入は、早急に取り組むべき課題といえるでしょう。

 

【参考】