省エネベンチマーク制度(産業トップランナー制度)~2018年度も対象業種の拡大を検討中~

省エネ法は1979 年に石油危機を契機として制定されましたが、それ以来、数々の制度が導入されてきました。近年においては、2009~2010年に省エネベンチマーク制度(産業トップランナー制度)が産業部門に導入され、その後、業務部門への導入、対象業種の拡大が行われています。今回は、この省エネベンチマーク制度について押さえておきたいポイントを、経済産業省による資料をもとに解説します。

1. 省エネ法の概要

省エネ法は、事業者へ適切な省エネ取組の実施を義務付ける法律です。事業者は年間の省エネ取組を定期報告し、国は取組状況を評価します。その主な評価基準の一つは、エネルギー消費原単位を年平均1%以上低減することにあります。取り組みが著しく不十分と見なされた場合、国による指導や立入検査、指示、公表、命令、罰則が課されます。

出典:経済産業省「ベンチマーク制度の概要について」P2(平成28年11 月資源エネルギー庁 省エネルギー課)

2. 省エネベンチマーク制度とは

省エネベンチマーク制度とは、事業者の省エネ状況を業種共通の指標(ベンチマーク指標)を用いて評価するものです。各事業者が目標の達成を目指し、省エネ取組を行う中で、その取組が他社と比較して進んでいるか遅れているかを明確にします。非常に進んでいる事業者を評価し、遅れている事業者にはさらなる努力を促す仕組みです。

3. 省エネ法における問題意識と省エネベンチマーク制度導入まで

省エネベンチマーク制度は、省エネ法に生じた、主に以下の問題を解決するために2008年より検討されはじめました。

1)エネルギー消費原単位の年平均1%以上低減を維持することが困難となっている。

2)すでに相当程度省エネ取組を進めてきた優良事業者が1%未達により適正に評価されない。

省エネベンチマーク制度は2009~2010年に、まず高炉による製鉄業や各種製造業などの6業種10分野の産業部門へ導入されました。そして2016年からは、事務所・ビル、卸小売業、ホテル・旅館などの業務部門に対象業種の拡大が行われています。

出典:経済産業省「ベンチマーク制度の概要について」P4~5(平成28年11 月資源エネルギー庁 省エネルギー課)

4. 省エネベンチマーク制度(産業トップランナー制度)の拡大

未来投資に向けた官民対話(第3回 2015年11月26日)において、製造業向けの産業トップランナー制度(省エネベンチマーク制度)を、2015年度中に流通・サービス業(業務部門)へ拡大し、3年以内(2018年度中)に全産業のエネルギー消費の7割に拡大する旨が、安倍総理より発表されました。
その翌年から対象業種の拡大が行われ、2016年4月に業務部門のトップバッターとしてコンビニエンスストア業、続いて2017年4月にはホテル・百貨店にも対象が拡大され、導入されました。今後の導入対象として、貸事務所、スーパー、ショッピングセンターが挙げられています。

出典:  経済産業省「ベンチマーク制度の今後の進め方について」P2(平成29年2月 資源エネルギー庁 省エネルギー課)

5. 事業者クラス分け評価制度

省エネベンチマーク制度は2017年度より、すべての事業者を省エネ状況に応じてS・A・B・Cの4段階へクラス分けしています。

ベンチマーク制度
  • (※1)  努力目標:5年間平均原単位を年1%以上低減すること。
  • (※2)  ベンチマーク目標:省エネベンチマーク制度の対象業種・分野において、事業者が中長期的に目指すべき水準。

事業者クラス分け評価制度のメリットは、ベンチマーク達成事業者は原単位1%低減を達成していなくてもSクラスに位置付けられ、複数のベンチマークを報告している事業者は、いずれか一つの業種でベンチマークを達成すればSクラスとされる点です。Sクラスに位置付けられれば、優良事業者として、経済産業省のホームページ上で事業者名や連続達成年数が表示されます。

出典:  経済産業省「ベンチマーク制度の概要について」P9(平成28年11月 資源エネルギー庁 省エネルギー課)