モントリオール議定書第28回締約国会議(MOP28)「キガリ改正」でさらに求められるHFC冷媒の削減

代替フロンである「HFC(ハイドロフルオロカーボン)」は、多くの機器、設備の冷媒として広く普及しています。しかし、HFCはオゾン層破壊物質ではないとはいえ、二酸化炭素の100 倍から 10,000 倍以上の大きな温室効果(GWP*)があり、削減へ向けた対策が必要と考えられてきました。このHFCによる影響で、今世紀末までの平均気温上昇は、摂氏約0.5度分と推計されています。

このような中、2016年10月10日~14日に、ルワンダのキガリにおいて開催された「モントリオール議定書」の第28回締約国会議において、HFCの生産及び消費量の段階的削減義務等を定める本議定書の改正(キガリ改正)が行われました。

キガリ改正によりHFCの段階的削減が義務化

モントリオール議定書でHFC規制の提案があった2009年以降も、オゾン層保護対策としてHFCの導入が進められてきました。キガリ改正では、日本を含む先進国は、2019年から削減を開始し、2036年までにHFCの生産量を2011~2013年の平均数量等を基準値として85%を段階的に削減することが義務付けられました。

HFC削減スケジュール

file

出典:外務省「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)」

このキガリ改正が着実に実施されることにより、気温上昇が摂氏0.06度分まで抑制可能となるとの推計が示されたといいます。

HFC冷媒からノンフロン冷媒への転換の必要性

日本では、現在、HFCの生産を明確に規制する法律はありません。2015年4月に「フロン排出抑制法」が施行され、ユーザーに対する設備の点検、フロンの漏えい量の報告義務が定められたことにより、冷媒の低GWP化を促すことには一定の効果があると考えられますが、HFCの具体的な削減規制ではありません。また、オゾン層保護法においてもHFCは対象外です。

しかしながらキガリ改正を受け、今後日本でもHFC削減に向けて、何らかの法律の改正か新法律の制定が必要とみられています。これにより、これまでHFC冷媒を用いた冷凍冷蔵空調機器業界も、早急に「低GWP*冷媒やノンフロン冷媒」へと転換する必要に迫られています。

このことから、ユーザー側にとっても、今後、冷凍冷蔵空調機器や発泡断熱材等、冷媒を使用した機器、材料を選択する際には、地球温暖化への影響が低い冷媒であるかどうかを、重要な選定基準とするべき時が来たといえます。

*GWP:Global Worming Potential、地球温暖化係数