国連気候行動サミット2019で「1.5度目標」を見据えた計画を各加盟国が表明

昨年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連気候行動サミット2019では、グテレス国連事務総長のもと、各国が温暖化ガス削減目標の引き上げや追加の資金拠出などの具体的計画を表明しました。

今回はこの国連気候行動サミット2019の概要をご紹介します。

 

1. 国連気候行動サミット2019とは

国連気候行動サミット2019は、グテレス国連事務総長による各国への呼びかけで開催されました。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告などで挙がっていた、21世紀末にかけての地球の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5度以下を目指す「1.5度目標」を重視すべきとの考え方を引き継ぎ、この「1.5度目標」を念頭に、各国には対策強化が求められました。

もともとパリ協定では「2度目標」が基準となっていました。これは平均気温の上昇を2度未満とし、さらに1.5度以下を目指すものです。しかしこれでは大きな温暖化被害が避けられないことが示され、「1.5度目標」が掲げられました。

そしてIPCCの報告書によれば、気温上昇を1.5度に抑えるためには、2030年までに温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年までに正味ゼロにする必要が出てきたことから、本サミットでは、2020年までにいかにして排出量を劇的に削減していくのか、という具体的対策が各国から持ち寄られました。

2. 温暖化の進み方の予測そのものが見直される可能性

一方で、こうした「1.5度目標」という基準がゆらぐ可能性も出てきています。温暖化の進み方を予測する際に基準となる「気候感度」の数値の見直しが進められているためです。

気候感度とは、大気中のCO2濃度が2倍になった場合、最終的に地球の平均気温が何度上昇するかを示す指標です。IPCCが数年おきに出している評価報告書のうち、2013年に出された「IPCC第5次評価報告書」では、気候感度が「1.5~4.5度」の範囲内に入ると報告されていました。しかし2021年に出される予定の「第6次評価報告書」では、従来考えられていた数値よりも大きくなる見通しがあるとされています。

もし気候感度が上がれば、より温暖化が早く進んでしまうことになるため、現時点で「1.5度目標」と据え、「2030年までに温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年までに正味ゼロにする」という計画では間に合わない可能性も出てきています。

 

3. 各国の気候変動対策

グテレス国連事務総長は、本サミットで「77カ国が2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにすると約束した」旨を強調しました。この77カ国に日本、米国、中国などは含まれていません。

そして2020年までに自国が決定する貢献(NDCs)を強化するための具体的、現実的計画が各加盟国から表明されました。主な内容をご紹介します。

 

ドイツ

2030年までにCO2排出量を1990年比で55%削減し、2050年には実質ゼロとする。

フランス

気候変動への対応と連動した貿易の枠組みづくりを行う。緑の気候基金(※)への出資額を引き上げる。

英国

緑の気候基金(※)への出資を倍に増やす。

中国

排出量取引制度を発展させる。

インド

電気自動車の導入を拡大。バイオ燃料の活用。

 

 

緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)とは

開発途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援するため、気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)に基づく資金供与の制度の運営を委託された基金。

 

【参照元】外務省「緑の気候基金

【参照】 国際連合広報センター「国連気候行動サミット2019(UN Climate Action Summit 2019)