国境炭素税とは

世界的に脱炭素に向けた取り組みが活発化する中、地球温暖化対策が十分でない国からの製品輸入に対して関税などの追加負担を課す「国境炭素調整措置(CBAM: Carbon Border Adjustment Mechanism)」いわゆる「国境炭素税(carbon border tax)」の導入に向けた検討が進みつつあります。

国境炭素税は、人々の幸福と健康の向上を目的とし、雇用を創出しながら排出量の削減を促進するという、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が発表したEUの新しい成長戦略「欧州グリーンディール」の看板政策です。EUは2030年までに温暖化ガスの排出量を40%削減、2050年にはゼロにするという目標を掲げており、すでに欧州首脳会議で2023年の国境炭素税の導入が決まっています。

国境炭素税によって途上国には排出量削減を促し、低炭素排出製品を開発する現地企業の競争の場を平準化するという議論は賛同を集めており、米国でもバイデン政権の誕生に伴い、いくつかの団体では国際的な気候変動対策の取り組みを米国がリードする手段として提案しています。実際、バイデン大統領は選挙時に温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の合意を満たせない国からの製品に「炭素調整料」を課すと公約しており、EUは共同歩調をとれると踏んでいます。

日本でも2020年12月に政府がまとめた2050年の温暖化ガス排出「実質ゼロ」に向けた工程表で、導入を検討する方針が盛り込まれ、経済産業省を中心に国境炭素税の導入に向けた検討が始まりました。

脱炭素社会への一歩ともなるが、遅れを取れば国際競争力を失う可能性もある国境調整措置。国際協調を取りつつ、日本の製造業に打撃を与えないような取り組みが必要となります。